このnoteでは最初にポアンカレ-ホップの定理を証明し、それからガウス-ボネ-チャーンの定理 を証明します。 最後に境界を持つ多様体の場合へのガウス-ボネ-チャーンの定理の拡張を行っています。 前提とする知識は”幾何のお話”、”トポロジー”、”ゲージ理論”のnoteあたり の内容及び、多様体論あたりの内容をになります。
この章においては多様体\(M\)を境界のない向きの付いたコンパクトな\(m\)次元多様体 であるとする。 そのような多様体\(M\)上の非退化なベクトル場\(v\)に対して次の定理が成り立つ。
ここで\(v\)が非退化であるとは\(v\)の全ての\(0\)点\(p\)において
であることをいう。
証明はいくつかの段階が必要である。
定義 .1 多様体\(M,N\subset P\)(\(\dim M+\dim N=\dim P\))に対して、 ある点\(x\in M\cap N\)における\(M,N\)の接ベクトル空間 \(T_xM,\ T_xN\)の直和が\(x\)での\(P\)の接ベクトル空間\(T_xP\)に等しい、即ち\(T_xM\oplus T_xN=T_xP\) である時、\(M\)と\(N\)は\(x\)で交叉するという。 特に\(\forall x\in M\cap N\)において交叉する時には単に\(M\)と\(N\)は交叉するという 11
通常は微分幾何学では\(\dim M+\dim N\geq \dim P\)の場合も考慮に入れて、 \(T_xM\oplus T_xN=T_xP\)である時に 横断的に交わると定義する。 このnoteでは議論がシンプルとなるように\(\dim M+\dim N=\dim P\)と条件を絞っておいて、 横断的に交わるとは区別するために、交叉するという呼び方にした。
定義 .2 向き付けられた多様体\(M,N\subset P\ (\dim M=m,\dim N=n)\)が交叉するとする。 点\(x\in M\cap N\)に対して、点\(x\)での\(T_xP\)の基底として\(T_xM\)の向き付けられた基底 \((v_1,\cdots ,v_m)\)及び\(T_xN\)の向き付けられた基底\((u_1,\cdots ,u_n)\)を選んだ時、 \(x\)での\(M\)と\(N\)の交差数\(I_x(M,N)\)を \(T_xP\)の基底\((v_1,\cdots ,v_m,u_1,\cdots ,u_n)\)が正の向きであれば\(+1\)、負の向きであれば \(-1\)として定義する。この時\(M\)と\(N\)の交差数を
で定義する。
さて、ベクトル場\(v\)は\(v:M\rightarrow TM\)を定義する。 \(M\)の\(v\)による像を\(v(M)\)と書く。この時\(v\)の任意の\(0\)点\(p\)は\(v\)が非退化であるため、 \(M\)と\(v(M)\)は交叉する。 この時(1)式の右辺は\(M\)と\(v(M)\)の交差数に等しい。 実際\(v:M\rightarrow v(M)\) を考えれば、\(v\)の\(0\)点は\(v\)が非退化である ため正則点となっている。 従って\(0\)点において\(M\)と\(v(M)\)は交叉する。 接ベクトルの代わりに余接ベクトル(1-form)で表せば、 向き付けられた\(TM^*\)の基底\((dx^1,\cdots ,dx^m)\)と \(Tv(M)^*\)の基底\((dv^1,\cdots ,dv^m)\)に対して、 \(T(TM)^*\)の基底\((dx^1,\cdots ,dx^m,dv^1,\cdots ,dv^m)\)の向きは \(\mathrm {sign}\left (\det \left (\frac {\pd \v {v}}{\pd \v {x}} \right )_p\right )\)であることに注意すれば分かると思う 22
もう少しだけ詳しく説明しておくと、\(T_xM^*\)の向き付けられた 基底を\((dx^1,\cdots ,dx^n)\)に取った時、 \(x\)の余接ベクトルは\(v=a_idx^i\)で与えられる。従って\(T(TM)\)の向き付けられた基底は \((dx^1,\cdots ,dx^n,da^1,\cdots ,da^n)\)で与えられる。即ち\(\v {a}\)の向きと\(\v {x}\)の向きは 等しい。従って\(d\v {v}\)の向きは\(\det \left (\frac {\pd \v {v}}{\pd \v {x}}\right )_p\)の 符号の正負に従う。
。
定理 .2 \(M\)を境界のないコンパクトな多様体とする。 \(f,g:M\rightarrow P\ (\dim f(M)=\dim g(M)=m)\)に対して\(f(M),g(M)\)が共に \(N\subset P\ (\dim N=n,\dim P=m+n)\)と交叉する。 この時\(f\)と\(g\)との間のホモトピー\(\varphi _t=\varphi (t,\cdot ):M\rightarrow P\)が存在し、 任意の\(t\)に対して\(\varphi _t(M)\)が\(N\)と交叉する時、 \(I(f(M),N)=I(g(M),N)\)である。
\(p\in f(M)\cap N\)とする。この時 \(p_t\in \varphi _t(M)\cap N\)に対して\(p_0=p\)であり、\(p_t\)において\(\varphi _t(M)\)と\(N\)が 交叉するものとする。定義により\(p_t\)は\(\varphi _t(M)\)において正則値である。 従って\(p_t\)の適当な開近傍\(U_{p_t}\subset \varphi _t(M)\)として、\(\varphi ^{-1}_t(U_{p_t})\) が互いに排他的で連結な開集合の族\(\{V_{x_t}\}_{x_t\in \varphi ^{-1}_t(p_t)}\)に等しくなる ように選べる。\(x\in f^{-1}(p)\)をひとつ任意に選べば、\(t\)を変化させていくに従って\(x\)から \(V_{x_t}\)を辿っていくことにより 道\(l:I\rightarrow I\times M\)(\(l(t)=(t,x_t),\ \varphi (x_t)=p_t\))が得られる。 この時\(g(x_1)=p_1\)である。 従って\(l(I)\subset I\times M\)は\(1\)次元多様体を成す。 後は”トポロジー”noteの写像度がホモトピー不変量であること の証明と同様である(”トポロジー”note参照)。■
定理 .3 \(M\)を境界のないコンパクトな多様体とする。また\(v\)を\(M\)上の 高々有限個の\(0\)点のみを持つベクトル場であるとし、\(p\)を\(v\)の任意の\(0\)点とする。 各\(p\)の十分に小さい (\(p\)以外の\(v\)の\(0\)点を含まない)近傍\(U_p\)に対して、\(\cup \{U_p\}_{p:vの0点}\) の外で\(v\)と全く同じで、各\(U_p\)の内部では 非退化な\(0\)点を\(1\)つ持つようなベクトル場\(u\)が存在する。
\(v\)の任意の\(0\)点\(p\)に対して\(p\)の十分近い開近傍\(U_p\)に対して、適当に座標系を 選ぶことにより\(U_p\simeq \mathbb {R}^m\)(\(\mathrm {dim}M=m\))と見なせる。 従って\(U_p\)内の局所基底をひとつ固定すれば、 \(U_p\)内では\(v\)は\(v:\mathbb {R}^m\rightarrow \mathbb {R}^n\)と見なせる。 ここで\(n<m\)であるとすると、\(v^{-1}(0)\)は\(m-n\)次元領域をなすため、\(v\)が高々有限個の\(0\)点 のみを持つことに反するので\(n=m\)である。即ち\(U_p\)と\(v(U_p)\)は\(1\)対\(1\)対応である。 ここで開近傍\(D\subset U_p\)を\(p\in D,\ \bar {D}\subset U_p\)であるように任意に選ぶ。 ”トポロジー”noteで触れたようにサードの定理により 臨界点からなる集合は測度\(0\)であるために、\(D\)内に必ず正則点を持つ。\(q\in D\)を任意の正則点 とする。\(D\)内で\(1\)であり\(U_p\)の外で\(0\)であるような\(M\)上の滑らかな関数\(\rho \)に対して、 \(v_1=v-\rho v(q)\)は\(U_p\)の外では\(v\)に等しく、\(U_p\)内には\(q\)のみを\(0\)点に持つ。 しかも\(q\)で\(v_1\)は非退化である。後は各\(v\)の\(0\)点について同様にして非退化な\(0\)点を持つ ベクトル場を構成していけば、求めるべきベクトル場\(u\)が得られる。■
補題 .1 境界のないコンパクト多様体\(M\)に対して、\(I\times M\)上のベクトル場\(v=v_t+c\pd _t\in \Gamma (T(I\times M))\)を考える。 ベクトル場\(v_t=(\pi _t)_*v\)が\(t=0,1\)では非退化であり 33
ここで
に対して
であり、\((\pi _t)_*\)は\(\pi _t\)の押し出しである。 詳しくは”トポロジー”noteを参照のこと。
証明は易しいの簡単に述べておく。ある\(t\)において\(v_t\)が\(M\)上の\(0\)点\(p\)で非退化であれば、 \(v_t\)の\(0\)点集合が\(M\)と\((t,p)\)で交叉するのは明らかであろう。 ある\(t\)において\(v_t\)が\(0\)点\(p\)で退化しているとすると、\(p\)を原点とした\(M\)上の ある方向ベクトル\(\Delta \v {x}\)に対して \(\frac {\pd \v {v}_t}{\pd \v {x}}(p)\Delta \v {x}=0\)である。 さて、今\(I\times M\)内の\((t,p)\)の十分小さい近傍\(U_p\)に対して \(v_t:U_p\rightarrow \mathbb {R}^m\) が定義される。この\(v_t\)に対しては\(0\)点集合は\(U_p\)内の\(1\)次元多様体を成す。 なぜなら\(\mathrm {dim}v_t(U_p)=n<m\)ならば \(v_t\)の\(0\)点集合は\(m-n+1\geq 2\)次元多様体を成すことになるので、 \(v_t\)が\(M\)上に高々有限個の\(0\)点のみしか持たないことに反する。 従って\(\mathrm {dim}v_t(U_p)=m\)である。即ち\(v_t\)の\(0\)点集合は\(1\)次元多様体を成す。 今\(\Delta v_t=\frac {\pd \v {v}_t}{\pd \v {x}}(p)\Delta \v {x}=0\)より、 \(v_t\)が一定である領域(即ち\(0\)点集合)の\((t,p)\)での方向ベクトルはこの\(\Delta \v {x}\)方向 に等しい。従って\(v_1\)の\(0\)点集合は\(p\)で交叉しない。■
補題 .2 上の補題の条件を満たすベクトル場\(v_t\)に対して、\(t=t_1\)及び\(t=t_2\)での\(v_t:M\rightarrow TM\) に対して\(M\)と\(v_t|_{t=t_1}(M)\)の交差数と\(M\)と\(v_t|_{t=t_2}(M)\)の交差数は等しい。即ち
である。
上の補題の証明により\(v_t:I\times M\rightarrow TM\)の\(0\)点集合\(\mathrm {Ker}v_t\) は\(I\times M\)内の\(1\)次元多様体を成すのが分かる。 また、\(t=t_1\)における\(v_t\)の任意の\(0\)点\((t_1,p)\)に対して、 \((t_1,p)\)を端点とする\(1\)次元多様体のもう片方の端点が\((t_1,q)\)であるとすれば、 一方からもう一方へ\(v_t\)の\(0\)点集合を\(TM\)の局所座標系を座標変換しながら辿っていけば \(p\)での\(T_pv_t(M)\)の向き\((dp,dv_t(p))\)と\(q\)での\(T_qv_t(M)\)の向き\((dq,dv_t(q))\)とは 逆向きになることが分かる(ここで\(dp\)と\(dq\)とは同じ向きに揃えているものとする)。 \((t_1,p)\)のを端点とする\(1\)次元多様体のもう片方の端点が\((t_2,q)\)であれば同じ向きになる。 従って証明したいことが得られる。 詳細は”トポロジー”noteの写像度がホモトピー不変量であることの証明と同様なので省略する。■
定理 .4 境界のないコンパクト多様体\(M\)上の\(2\)つの非退化なベクトル場\(v_1,v_2\)に対して、 \(v_1(p)\)と\(v_2(p)\)の線形結合が係数を固定した時に、高々有限個の点\(p\)においてのみ 一次従属となるとする。 この時\(v_1,v_2:M\rightarrow TM\)の交差数は等しい。 即ち
である。
ベクトル場\(v=tv_1+(1-t)v_2\)を考えれば、仮定により\(v\)は補題の条件を満たす。 従って補題.2より明らかである。■
さてこれでポアンカレ-ホップの定理が証明できる。 上の定理2.4により”トポロジー”noteの「多様体の分割」の節で与えたような \(M\)上の滑らかな関数\(f:M\rightarrow \mathbb {R}\)に対して ベクトル場\(^*df\)は非退化な\(M\)上のベクトル場となる。\(M\)上の任意の非退化なベクトル場\(v\) に対して、\(f\)を変形することにより\(^*df\)と\(v\)が高々有限個の点においてのみ一次従属 となると仮定できる。 従って\(I(M,v(M))=I(M,\ ^*df(M))\)である。 さて任意の\(^*df\)の\(0\)点\(p\)に対して、適当に\(p\)の近傍の局所座標系を取ることにより
と書ける。従って
となる。”トポロジー”noteの「オイラー数」の節の最後の結果によれば、 \((-1)^{\lambda _p}\)を\(^*df\)の全ての\(0\)点\(p\)にわたる和はオイラー数\(\chi (M)\)に等しい。 従って
を得る。
\(n\)次元ユークリッド空間\(M=\mathbb {R}^n\)を底空間とし、ファイバーが\(F=\mathbb {R}^n\)である ベクトル束を\(E\)とする。 \(E\)の外積束\(\w ^*E=\underset {p}{\oplus }\w ^pE\)に対して、\(\w ^qE\)値のp-form \(\omega \in (\w ^qE)\otimes \Omega ^p(M)\)は、\(\omega _1\in \Omega ^p(M)\)及び \(e_{i_1},\cdots ,e_{i_q}\in \Gamma (E)\)を用いて
の形の線形結合として表される 。\((\w ^*E)\otimes \Omega ^*(M):=\sum _{p,q}(\w ^qE)\otimes \Omega ^p (M)\)と書く。 以上の定義により\(\w ^*E\)は”経路積分”noteで定義しておいた グラスマン束となる。
\(\Gamma (E)\)の局所正規直交基\(e_1,\cdots ,e_n\)に向きを適当に定義する。 この時\((\w ^*E)\otimes \Omega ^*(M)\)上のグラスマン積分(Berezin積分) \(\int ^B\)を上記のように書ける\(\omega \)に対して
と定義する。これも”経路積分”noteで定義したグラスマン積分と一致する。 しかもこれは定義により\(\Gamma (E)\)の局所正規直交基の選び方によらない。 以下では特に断らない限り\(\Gamma (E)\)の基底\((e_1,\cdots ,e_n)\)を正の向きに並んだ 局所正規直交基であるとする。
さて\(n\)次元ユークリッド空間\(M=\mathbb {R}^n\)上の座標系を\(\v {x}=(x^1,\cdots ,x^n)\)と選ぶ。 簡単な計算により、n-form
に対して
が分かる。これより\(\v {x}=\sum _ie_ix^i\in \Gamma (E)\)に対して
となる。即ち
を得る。
さて今度は\(M\)を一般的な \(n\)次元多様体であるとする。 底空間を\(M\)としたファイバーが\(n\)次元のベクトル空間\(V\)である (\(V\)が実ベクトル空間の場合には構造群\(G:V\rightarrow V\)は\(O(V)\)や\(SO(V)\)、または\(GL(V)\) 44
などである) ベクトル束を\(E\)とする。 この場合にも\((\w ^*E)\otimes \Omega ^*(M)\)上のグラスマン積分が定義出来る。 \(\nabla ^E\)を\(E\)上の接続とする。 一般的に言って、ベクトル束\(E\)の構造群\(G\)は\(\Gamma (E)\)の局所基底に条件を課したときに、 条件を満たす局所基底の間の座標変換により特徴付けられる。 この意味でそのような局所基底を構造群\(G\)を特徴付ける局所基底と呼ぶ事にする 55
例えば\(G=O(V)\)であれば、\(\braket {e_i,e_j}=\eta _{ij}\)を満たす基底の組(即ち 局所正規直交基)であり、 \(G=SO(V)\)ならば\(e_1,\cdots ,e_n\)は向きの定義された局所正規直交基である。 また\(G=GL(V)\)ならば局所基底である。 特に\(V\)が複素ベクトル空間の場合には\(G=O(V)=U(V)\)は \(\braket {e_i,e_j}=g(e_i^*,e_j)=\eta _{ij}\) により、\(G=SO(V)=SU(V)\)ならばさらに\(e_1,\cdots ,e_n\)に向きが付けられたものにより 特徴付けられる。 また\(G=GL(V)\)は実ベクトル空間と同様に局所基底である。
。
補題 .3 内積の定義されたベクトル束\(E\)に対して\(\Gamma (E)\)の、構造群\(G\)を特徴付ける局所基底 を\(e_1,\cdots ,e_n\)とする。 また\(E\)上の計量\(g\)を保つ接続\(\nabla ^E\)が定義されているとする。 この時、別の\(G\)を特徴付ける局所基底への座標変換のもとで不変な、計量\(g\)の関数 \(f(g)=a^{i_1i_2\cdots i_{2k-1}i_{2k}}g_{i_1i_2}\cdots g_{i_{2k-1}i_{2k}}\)(\(a^{i_1i_2\cdots i_{2k-1}i_{2k}}\)は定数)に対して
である。また\(a=a^{i_1i_2\cdots i_{2k-1}i_{2k}}e_{i_1}\otimes \cdots \otimes e_{i_{2k}}\) に対して
である。
\(a=a^{i_1i_2\cdots i_{2k-1}i_{2k}}e_{i_1}\otimes \cdots \otimes e_{i_{2k}}\)と置けば \(f(g)=a(\underbrace {g,\cdots ,g}_{k個})\)と書ける。すると
と書ける。第一項目は接続\(\nabla ^E\)が計量\(g\)を保つので\(0\)である。 今\(f(g)\)が\(G\)による座標変換のもとで不変なので\(a\)もまた\(G\)による座標変換のもとで不変である。 そこで座標変換を\(\v {e}_t=\exp (tM)\v {e}\)(\(M\in \mathfrak {g}\))と表せば、
今は\(M\)は任意の\(\mathfrak {g}\)の元なので、\(M\)の代わりに接続形式\(\omega \) (\(\nabla ^E=d+\omega \))を用いても成立している。 これは\(\nabla ^Ea=0\)を意味している。従ってまた\(df(g)=0\)である 66
この証明は実質的に”ゲージ理論”noteのEuler形式が閉形式であることの証明と同じである。 従ってこの議論を計量の代わりに\(\nabla ^E\)の曲率\(\Omega \)を用いても同じことが言える。
。 ■
この補題により特に計量のパッフィアンに対して\(d\mathrm {Pf}(g)=\nabla ^E\mathrm {Pf}(g)=0\)である。 また\(G\)を\(SO(V)\)と選べば\(SO(V)\)を特徴付ける局所基底は向きの付いた局所正規直交基である。 その場合、\(a=e_1\w \cdots \w e_n\)と置けば\(\nabla ^E(e_1\w \cdots \w e_n)=0\)が分かる。
再び\(E\)を底空間が境界のない向き付けられた\(n\)次元コンパクト多様体\(M\)で ファイバーが\(F=\mathbb {R}^n\)のベクトル束であるとする。 また今度は\(E\)に内積が定義されていて計量を\(g\)とする。 \(\Gamma (E)\)の向きの付いた局所正規直交基を\(e_1,\cdots ,e_n\)とし、 \(\nabla ^E\)を従って計量を保つ接続とする。 またこの基底での計量の表示を\(\eta _{ij}=\pm 1\)であるとする。
補題 .4 \(\omega \in (\w ^*E)\otimes \Omega ^*(M)\)に対して
である。
\(\omega =\omega _1 e_1\w \cdots \w e_n,\ \omega _1\in \Omega ^p(M)\)と仮定しても一般性を失わない。 この時上述のことより
となる。■
ベクトル束\(E\)の局所座標系は、\(\Gamma (E)\)の局所基底\(e_1,\cdots ,e_n\)を用いて \(E\)の元を\(v=e_i(x)v^i\in E\)と書いた時\((x^1,\cdots ,x^n,v^1,\cdots ,v^n)\) で与えられる。この時、 \(\omega =\omega _1 e_{i_1}\w \cdots \w e_{i_q}\)(\(\omega _1\in \Omega ^p(E)\)) に対して 縮約\(\iE {v}\) (\(v\in E\))を
で定義する。また、\(E\)上の接続\(\nabla ^E\)を自然に \(\nabla ^E:(\w ^*E)\otimes \Omega ^*(E)\rightarrow (\w ^*E)\otimes \Omega ^{*+1}(E)\) と考えることが出来る。ここで\(\nabla ^E\)の\((\w ^*E)\otimes \Omega ^*(E)\)への作用は、 接続形式を\(\omega \)とすれば通常通り\(\nabla ^Ee_i=e_j\omega _{ji}\)で定義する。 この時次の補題が成り立つ。
補題 .5 内積を持つ実ベクトル束\(E\)の内積を保つ接続を\(\nabla ^E\ (=d+\omega )\)とし、 その曲率を\(\Omega ^E\)とする。また\(B^E\in (\w ^2E)\otimes \Omega ^2(M)\) を”ゲージ理論”noteのEuler形式の箇所で定義した2-form、 即ち \(\Omega ^E_{im}\eta _{mj}=B^E_{ij}\)に対して
であるとする。\(B^E\)は自然に\(B^E\in (\w ^*E)\otimes \Omega ^2(E)\)と見なせる。 この時\(\v {v}=e_iv^i\in E\)とすれば、
に対して
である。ここで\(|\v {v}|^2=\braket {\v {v},\v {v}}\)である。
これは順次計算していけば確かめられる。\(\nabla ^EA\)の最初の項は、
となる。第二項目は
となる。ここで 最後の等式は\(e_i\)の双対基を\(\theta ^i\)として \(\Omega ^E=e_i\Omega ^E_{ij}\theta ^j\)であること、また\(B^E_{ij}=-B^E_{ji}\)に注意すれば分かる。 第三項目はBianchiの恒等式より\(0\)となる(”ゲージ理論”note参照)。 以上のことが分かれば等式を確認するのは容易である。■
次に上記補題の\(A\)を少し変更して
と置く。この時、次の補題が成り立つ。
補題 .6 \(E\)上のn-form \(U_t\in \Omega ^n(E)\)を
と置けば
である。この結果は多様体\(M\)とファイバー\(F\)の次元が異なる場合でも成立する。
まず
また、この\(A_t\)に対しては
となる。 従ってこれと、\(\frac {dA_t}{dt}\)と\(A_t\)が交換すること、 また\([\nabla ^E,\v {v}]=\nabla ^E\v {v}\)、\(\{\iE {\v {v}},\v {v}\}=|\v {v}|^2\)、 及び補題3.3より
となる。最後の等式は補題3.2による。■
特に\(M\)が\(n\)次元多様体で、ファイバー\(F\)が\(n\)次元ベクトル空間 の場合には、\(\int ^B\v {v}\w e^{A_t}\)がn-1-formであることに注意すれば、ストークスの定理 より
となることが分かる。
以上により\(\int _MU_t\)は\(t\)には依存しない。従って特に\(n\)が偶数である場合には\(n=2m\)と置き、 \(t=0\)と置けば
を得る。ここで\(\mathrm {Pf}(B^E)\)は\(B^E\)のパッフィアンである 77
。
補題 .7 底空間\(M\)及びファイバー\(F\)がともに\(n=2m\)次元である、 ベクトル束\(E\)の異なる\(2\)つの接続\(\nabla _0^E\)、\(\nabla ^E_1\)に対して、 ある\(\omega \in \Omega ^{n-1}(M)\)が存在して
となる。
証明は”ゲージ理論”noteの「特性類」の節で計算したものと同様である。念のため ここでも証明しておく。 \(\nabla ^E_t=(1-t)\nabla ^E_0+t\nabla ^E_1\)と置く。
従って
を得る。■
”ゲージ理論”noteによれば、
をEuler形式といい、そのコホモロジー類をEuler類と呼んだ。 今、\(M\)が局所正規直交基による表示で計量が\(\delta =1\)となる多様体(リーマン多様体)であるとし、 ベクトル束を\(E=TM\)に選んだ時、次の定理が成り立つ。
定理 .5 (ガウス-ボネ-チャーンの定理) \(n=2m\)次元の境界のない向き付けられたコンパクト多様体\(M\)に対して
が成り立つ。
証明の前に説明をひとつ付け加える。 上記\(U_t\)は\((\w ^*E)\otimes \Omega ^*(E)\)上で定義されている。 従って、 ベクトル場\(v:M\rightarrow TM\)による引き戻し \(\left (\frac {1}{2\pi }\right )^mv^*\int ^BU_t\)がEuler形式と等しいと解釈するべきである。
さて、\(M\)上の非退化なベクトル場を\(v\)とする。\(v\)の任意\(0\)点をひとつ選び\(p\)と置く。 \(p\)を原点とした、\(p\)のある開近傍\(U_p\simeq \mathbb {R}^n\)内での適当な局所座標系を\(x\)と取る。 \(v=e_iv^i\)(\(e_i=\pd _i\)) は\(U_p\)内で全単射\(v:\mathbb {R}^n\rightarrow \mathbb {R}^n\)を定義し、
と書ける。さて、\(M\)の計量を適当に取り直せば、\(U_p\)内では この局所座標系による表示で
であると仮定できる。従って\(U_p\)内では曲率が\(0\)であるため、
となる。 最後の等式の第二項目は\(M\backslash \underset {p}{\cup }\{U_p\}\)内では\(\braket {v,v}>0\) であるため\(t\rightarrow \infty \)の極限では\(0\)となる 88
この項は\(t\)の\(0\)次から\(n\)次までの和の形になるが、最も利いてくるのは\(t^n\)次の項である。 しかしこの項も\(t\rightarrow \infty \)の極限においては\(e^{-\frac {1}{2}|x|^2}\)の無限遠方 の領域での積分となるため\(\rightarrow 0\)となる。
。 第一項目に関しては、\(p\)が\(v|_{U_p}\)の正則点であることから、 この章の最初のほうの計算により、\(t\rightarrow \infty \) において、
となる。従ってポアンカレ-ホップの定理により定理が示される。■
\(2\)次元多様体の場合のガウス-ボネの定理はこの特別な場合として得られる。
(ここで念のために注記しておきます。”トポロジー”noteでも書いたように、境界のない コンパクト多様体の場合にはド・ラームコホモロジー群に対して\(H^p(M)=H^{n-p}(M)\) であった。即ち\(M\)が奇数次元の場合には\(\chi (M)=0\)である。従って奇数次元の場合には オイラー類を\(e(TM,\nabla ^{TM})=0\)と定義しておけば、ガウス-ボネ-チャーン の定理は任意の次元に対して成立する。)
この章では向きの付いたコンパクトな境界付きリーマン多様体の場合を考える。 その場合においても ベクトル場\(v\)を\(M\)の内点においてのみ\(0\)点を持つ非退化なベクトル場であるとすれば、 ポアンカレ-ホップの定理の議論はそのまま成り立つことに注意されたい。 修正されるべき箇所は補題3.4以下の箇所である。 多様体\(M\)が境界を持つ場合には
において右辺は今度は\(0\)とはならない。 もう一箇所は補題3.5の、接続を取り直すことから来る境界上での積分項であるが、 この項に関しては定理3.1の証明において計量を境界\(\pd M\)の近傍ではもとの計量と一致するように 取れば\(\pd M\)上では\(\frac {d\nabla ^E_t}{dt}=0\)となり、この項からの寄与は生じない。 以上により境界を持ったコンパクト多様体の場合のガウス-ボネ-チャーンの定理は
となる。奇数次元の場合には右辺の第一項目は\(0\)となる。 以下では偶数次元と奇数次元の場合に分けて右辺の第二項目を計算していく。
境界を持ったコンパクト多様体\(M\)の次元が\(n=2m\)の場合。 ベクトル場\(v\)は\(M\)の内点のみで\(0\)点を持つため、\(\pd M\)上では\(v\neq 0\)である。 従って\(\pd M\)の各連結成分\((\pd M)_\alpha \ (\alpha =1,2,\cdots )\)内において、 \(v\)は常に外向きであるか内向きであるかのどちらか である。\(q\in \pd M\)の\(M\)内での近傍\(U\)の局所座標系を
とする。また\(\pd M\)の向きは通常通りに\((x^0,\cdots ,x^{n-1})\)が正の向きである場合に、 \((x^1,\cdots ,x^{n-1})\)が正の向きであるように定義する。
さて、\(U\)内においてのみ\(v\)を変形することにより、 境界において\(v\)が外向きであれば \(U\)内で\(v=\frac {\pd }{\pd x^0}\)であり、 \(v\)が内向きであれば \(U\)内で\(v=-\frac {\pd }{\pd x^0}\)であると仮定できる。 \(\pd M\)上の各点の近傍においてそうであるように変形する。 境界積分の項の、\(U\)内における局所座標系での表示を与えよう。 \(A_t\)の三項の内どのふたつも交換するので、また\(\pd M\)上では \(|\v {v}|^2=1\)に注意すれば
ここで\(B^{TM}\in (\w ^2{TM})\otimes \Omega ^2({TM})\)及び、 \(\nabla ^{TM}\v {v}\in {TM}\otimes \Omega ^1({TM})\)である ので、\(\int ^B\)の被積分関数は\(2m=2a+b+1\)であるもののみが寄与する。 従って\(b\)は奇数である。従って接続形式を\(\omega ^i\ _j\)とすると
ここで添え字の\(i_1,\cdots ,i_b,j_1,\cdots ,j_{2a}\)は\(1,2,\cdots ,n-1\)を取るものとする。 従って積分の際には境界\(\pd M\)の向きを通常通りの選び方に取れば、
と書けば、
となるのが分かる。ここで第二項目の符号は\((\pd M)_\alpha \)で\(v\)が外向きであれば\(+\)、 内向きであれば\(-\)を取る。
\(n=2m+1\)の奇数次元の場合には(49)において\(b\)は偶数である。 従って
ここで最後の等式に関して、\(i^*B^{TM}\)は\(M\)上の曲率\(B^{TM}\)の射入\(i:\pd M\subset M\)による 引き戻しであり、
となることから分かる。従って
となる。ここで符号は\((\pd M)_\alpha \)で\(v\)が外向きであれば\(+\)、内向きであれば\(-\) を取る。
例として以下の簡単な場合を考えてみよう。境界を持つ\(2m+1\)次元多様体
のオイラー数は\(O\)のレトラクトとして\(S^{2m}\)が取れるので、 \(\chi (O)=\chi (S^{2m})=2\)である。 一方、\(O\)の境界は\(S^{2m}_+\cup S^{2m}_-\)である。 ここで\(\pm \)の符号は\(x^0=1\)の方を\(+\)、\(x^0=\frac {1}{2}\)の方を\(-\)としている。 ベクトル場\(v\)として原点から外向きの 大きさが\(1\)のベクトル場を取る事が出来る。従って\(v\)は\(O\)内に\(0\)点を持たない。 また外側の境界\(S^{n-1}_+\)では外向きであり、内側の\(S^{2m}_-\)では内向きである。 従って外側では、\(i_+:S^{2m}\simeq S^{2m}_+\subset O\)とすれば
であり、内側では\(i_-:S^{2m}\simeq S^{2m}_-\subset O\)とすれば
となり、実際に一致しているのが分かる。
ここでは疑リーマン多様体\(M\)を考える。即ち、計量が局所直交基底を用いて
と表されるものとする。 向き付けられた境界のないコンパクトな 疑リーマン多様体の場合にも節のガウス-ボネ-チャーンの定理.5の証明と同様の議論が行える。 即ち、”解析の話発展変”noteで導いた最後の等式より
が得られるが、これより\(\alpha \in \mathbb {R}\)に対して
従って
に対して
となる。従って
とすれば
はリーマン多様体の時と同様に\(t\)に依存しない。\(n\)が偶数である場合には\(n=2m\)と置き、 \(t=0\)と置けば
ここで第二項目は\(t\rightarrow \infty \)の極限において、\(\rightarrow 0\)となる。 第一項目は
従って、
が得られる。ここでオイラー数\(\chi (M)\)および右辺の積分はともに整数であるので、\(\lambda \)が奇数の場合にはオイラー数は\(0\)でないといけないことが分かる。 即ち次の定理を得る。
定理 .6 向き付けられた境界のないコンパクトな偶数次元の疑リーマン多様体\(M\)の局所正規直交基底を用いた時の計量の表現が()で与えられた時、\(-1\)の成分の個数が奇数であるとき、疑リーマン多様体\(M\)のオイラー数\(\chi (M)\)は\(0\)に等しい。
計量の\(-1\)の成分の個数\(\lambda \)が偶数の時、\(\lambda =2\sigma \)と表せば、疑リーマン多様体のガウス-ボネ-チャーンの定理は次のように表される。
定理 .7 (疑リーマン多様体のガウス-ボネ-チャーンの定理) 向き付けられた境界のないコンパクトな偶数次元の疑リーマン多様体\(M\)の局所正規直交基底を用いた計量の表現()に対して、\(-1\)の成分の個数が\(2\sigma \)個である時、
が成り立つ。
ポアンカレホップの定理の証明の最終部分を考慮すると、向きの付いたコンパクトな多様体\(M\)に\(0\)点を持たないベクトル場\(v\)が存在した場合、必然的に
となり、オイラー数が\(0\)となることが導かれる。 証明の流れとしては\(v_t=tv+(1-t)df\)を取って補題、補題.2、定理.4を追うと良い。
補題 .8 向きの付いたコンパクト多様体\(M\)に\(0\)点を持たないベクトル場\(v\)が存在するならば、オイラー数\(\chi (M)=0\)である。 逆に向きの付いたコンパクト多様体\(M\)のオイラー数が\(0\)でないならば\(M\)上のベクトル場\(v\)は必ず\(0\)点を持つ。
これにより不動点定理が得られる。
定理 .8 (不動点定理) 向きの付いたコンパクト多様体\(M\)の自身への同相写像\(\varphi :M\rightarrow M\)と恒等写像\(1:M\rightarrow M\)とのホモトピー\(\varphi _t\)が存在し、\(\varphi _t\)の微分が\(t\)に依存しないベクトル場を定める時、 \(M\)のオイラー数が\(0\)でないならば\(\varphi (p)=p \in M\)なる点\(p\)(不動点)が存在する。
証明は次の通り。ホモトピーを\(\varphi _t:M \rightarrow M\ \ (t\in [0,1])\)とした時、\(M\)の各点\(p\)に対して\(\varphi _t(p)\)の\(t\)での微分は\(M\)のベクトル場\(v\)を定義する。 今、\(v\)の\(0\)点が存在しないならば上記の補題よりオイラー数\(\chi (M)=0\)となる。 従ってオイラー数が\(0\)でないならば\(v\)は必ず\(0\)点を持つ。\(v\)の\(0\)点を\(p\)とすると、\(v\)は\(t\)に依存しないために、 任意の\(t\)に対して\(\varphi _t(p)=p\)である。 従って\(p\)が求めるべき不動点である。■