この『トポロジー III』ノートでは、これまで触れてきたベクトル場やコホモロジー、特性類の話をさらに発展させて、ポアンカレ–ホップの定理やガウス–ボネ–チャーンの定理の本質に踏み込んでみた内容になっています。
単なる定理の紹介ではなく、実際にそれらがどのように証明され、何を意味しているのかを、できる限り自分の言葉で丁寧に追っています。
冒頭ではポアンカレ–ホップの定理を、ベクトル場の0点と多様体のオイラー数の関係として紹介し、写像の交差数やホモトピーの不変性といった位相的アイデアを絡めて論理を積み上げています。個人的に特に面白かったのは、0点の符号が接ベクトルの行列式の符号と一致する、という計算的にも実感のある話。
そしてメインとなるのは、ガウス–ボネ–チャーンの定理の導出です。グラスマン積分やパッフィアン、曲率形式を駆使して、オイラー類がいかにして現れるかをガウシアン積分の視点(経路積分的な視点(?))から丁寧に構成しました。
境界付き多様体の場合へのガウス-ボネ-チャーンの定理の拡張や、奇数次元での補正項の登場、さらに疑リーマン多様体での符号の取り扱いなど、教科書では触れにくい細部にまで足を踏み入れています。
ラストには不動点定理も取り上げ、ベクトル場が定義できることと不動点の存在とをオイラー数で結びつける、トポロジーらしい結論を結んでいます。抽象と計算、理論と直感がうまく融合した話を書けた気がしていて、読み返すたびに発見があるノートになりました。
前提とする知識は『幾何のお話』、『トポロジー』、『ゲージ理論』のノートあたりの内容になります。