トポロジーのトピックを書きました。 一般的なトポロジーはここでは扱いません。多様体をトポロジー的に扱う方法みたいなことをまとめました。
ここではまず、一般的なチェイン複体、及び必要なものを定義していく。 これはそのままド・ラーム複体として\(\Omega ^*\)上に 当てはめることが出来る。
アーベル群の系\(A=\{A^p\}\)、準同型\(d\)に対し次の系列をチェイン複体という。
正確には\(d_p\)と次数つきで書くべきであるが、簡単に書くために混乱の恐れがなければ省略して書く。 また、チェイン複体は正確にはアーベル群の系\(A\)と準同型\(d\)の組\((A,d)\)であるが、混乱の恐れ がなければこれも省略して書くとする。
チェイン複体\((A,d)\)に対して、各\(A^p\)の部分アーベル群\(B^p\)があり、 \(\forall b\in B^p\)に対して、\(db\in B^{p+1}\)である時(\(dB^p\subset B^{p+1}\)と書く)、 チェイン複体\((B,d)\)を考えることが出来る。この時\((B,d)\)を\((A,d)\)の部分複体という。 また、\(dB^p\subset B^{p+1}\)より、部分複体\((B,d)\)による商群\((A/B,d)\)、即ち
を定義出来る。
チェイン写像\(\varphi \)とは準同型の系\(\varphi =\{\varphi _p\}\)であり、 2つのチェイン複体\(A,B\)の間の次の図式
が可換なものである(つまり\(d\varphi =\varphi d\)である)。
2つのチェイン写像\(\varphi :A\rightarrow B,\ \ \phi ;A\rightarrow B\)に対し、それらがチェインホモトピーまたは単にホモトピー であるとは、 ある準同型の系\(K=\{K_p\},K_p:A^p\rightarrow B^{p-1}\)であり、
が成り立つ時であり、\(\varphi \simeq \phi :A\rightarrow B\)と書く。 この時\(\varphi \)と\(\phi \)はホモトープであるといい、\(K\)をホモトピーという。
次に2つのチェイン写像\(\varphi :A\rightarrow B,\ \ \phi :B\rightarrow A\)が存在し
が成り立つ時、\(A\)と\(B\)はチェイン同値であるといい、\(\varphi ,\phi \)をチェイン同値写像 であるという。
チェイン複体\(A\)に対し\(A^p\)の部分群\(Z^p(A),B^p(A)\)を
で定義する。\(B^p(A)\)は\(Z^p(A)\)の部分群である。剰余群
をp次コホモロジー群という。また\(Z^p(A)\)、\(B^p(A)\)、\(H^p(A)\)の元をそれぞれpサイクル、 pバウンダリー、pコホモロジー類という。
チェイン写像\(\varphi :A\rightarrow B\)は\(Z^p(A),B^p(A)\)をそれぞれ\(Z^p(B),B^p(B)\)へ移すので 自然に共変関手
を誘導する。
チェイン写像\(\varphi ,\phi :A\rightarrow B\)がホモトープならば\(\varphi _*=\phi _*:H^p(A)\rightarrow H^p(B)\)である。よってチェイン同値写像であれば、\(\varphi _*,\phi _*\)は同型写像になる。 つまり\(H^p(A)\simeq H^p(B)\)である。
多様体\(M\)上のp次微分形式(p-form)全体の集合を\(\Omega ^p(M)\)と書き、\(\Omega ^*(M)= \stackrel {p}{\oplus }\Omega ^p(M)\)と書くとする11
。また外微分を\(d\)で書くとする。 \(d\)は\(\Omega ^p(M)\)に線形に作用することに注意せよ。 この時、ド・ラーム複体とは\((\Omega ^*(M),d)\)である。 \(\Omega ^p(M)\)の部分群\(Z^p(M),B^p(M)\)をそれぞれ
と定義すると、\(d^2=0\)より\(B^p(M)\)は\(Z^p(M)\)の部分群である。余剰群
をp次ド・ラーム(de Rham)コホモロジーという。\(Z^*(M),B^*(M),H^*(M)\)などと書いたときは 全ての次数の直和を表すことにする。 \(Z^p(M)\)、\(B^p(M)\)、\(H^p(M)\)の元をそれぞれ、p次閉形式、p次完全形式、p次コホモロジー類 という。
次に2つの多様体\(M,N\)に対し、その間の滑らかな写
に対し、反変関手として\(\Omega ^p,H^p\)上に
が誘導される。即ち、端的には\(M,N\)の局所座標系をそれぞれ\(x,y\)で表すと、
の対応に対し、\(\omega \in \Omega ^p(N)\)を
と(簡略的に)書くと
である。これは引き戻しといわれる。\(f_H^*\)はこれをコホモロジーへの作用とみたもの。 \(f^*\)は外微分\(d\)と可換である。つまり
及び
となることから\(df^*=f^*d\)である。
前節までのことをそのままド・ラーム複体\(\Omega ^*(M)\)へ対応させれば、 多様体\(M,N\)の滑らかな写\(f:M\rightarrow N\)に対し、\(f^*\)はチェイン写像であり、\(f^*_H\)は そのコホモロジーへの誘導である。また\(M\)と\(N\)が微分同相である時、 \(f^*,f^*_H\)はともに、同型写像になるのが分かる。
多様体\(M\)に対して(\(I=[0,1]\)とする)次の3つの写像
を考える。\(M,I\)の局所座標をそれぞれ\(x,t\)で表すとする。
に対し、準同型の系\(K=\{K_p\}\)、\(K_p:\Omega ^p(M\times I)\rightarrow \Omega ^{p-1}(M)\)を
とする。この時、
従って
となる。つまり\(i_{t_1}^*\)と\(i_{t_0}^*\)はホモトープである。よって
これから一般に、多様体\(M,N\)に対し滑らかな写\(f,g\)があり、それらがホモトープ\(f\simeq g:M \rightarrow N\)であるとする。即ち
で、ホモトピー\(\varphi _t:=\varphi (t,\cdot )\)で、\(\varphi _{t_1}=f,\ \varphi _{t_0}=g\)であると すると、\(\varphi _t=\varphi \circ i_t\)より\(\varphi _{tH}^*=i^*_{tH}\varphi ^*_H\)となるので
となる。
次に\(R:\Omega ^p(I\times M)\rightarrow \Omega ^{p-1}(I\times M)\)を
で定義する。この時
よって
となる。従って
また、\(\pi ^*_{tH}=\pi ^*_Hi^*_{tH}\)、及び\(\pi ^*_H\)の単射性より\(\pi ^*_{tH},\pi ^*_H,i^*_{tH}\) は全て同型写像であることが分かる。 特に\(\pi ^*_H\)の同型より、
である。
以上のことは\(I\)の代わりに\(\mathbb {R}\)であってもそのまま成立する。よって
でもある。
次に\(A\subset M\)がレトラクトであるとは
が\(M\)上に拡張出来る、即ち
があって、\(r|_A\)(\(r\)の\(A\)への制限)が\(r|_A=1:A\rightarrow A\)である時。 射入\(i:A\subset M\)に対し\(ir:M\rightarrow A\subset M\)が\(1:M\rightarrow M\)とホモトープであり、 ホモトピーの\(A\)への制限が常に恒等写像である時、 \(r\)を変位レトラクションといい、\(A\)は\(M\)の変位レトラクトであるという。 この時、\(ri=1\)は明らかなので、誘導される\(r^*_H,i^*_H\)はともに同型である。 よって
である。直観的には\(M\)が滑らかに\(A\)に変形出来るなら、そのコホモロジー群が等しいということ。 これを\(A\sim M\)と書くことにする。
特に\(M\)が1点に可縮である時、即ち1点が\(M\)の変位レトラクトである時
となる。これをポアンカレの補題という。
1点のコホモロジーは
従って、\(\mathbb {R}^n\)は1点に可縮なので
である。
まず、いくつかの定義から始める。
チェイン複体\((A,d)\)
が完全系列であるとは、全てのpに対して \(\mathrm {Ker}d_p=\mathrm {Im}d_{p-1}\)となる時である。
アーベル群\(A,B,C\)及び準同型
\(\delta _1:A\rightarrow B,\ \ \delta _2:B\rightarrow C\)(これも省略して\(\delta \) とだけ書くこともある)の系列
が完全系列である時、短完全系列という。 完全性より\(\delta _1\)が単射であること、\(\delta _2\)が全射であることが分かる。
完全系列\((A,d)\)に対し、各段階で短完全系列が作れる。つまり
は短完全系列である。
次にチェイン複体\((A,d_A),(B,d_B),(C,d_C)\)があり、各pに対して\(A^p,B^p,C^p\)が短完全系列 であり、\(d_A,d_B,d_C\)も添え字を略して\(d\)とだけ書いた時、\(d\delta =\delta d\)である場合 を考える。即ち
の可換な図式が成り立つ場合である。
この時、\(H_d^{p-1}(C)\)から\(H_d^p(A)\)への対応が存在する。 ここで添え字\(d\)は図式の縦に見たときのチェイン複体の p次コホモロジー群を意味している。
まず、\(C^{p-1}\)の元\(c\)で\(dc=0\)であるとする。この時、\(\delta _2\)の全射性より \(B^{p-1}\)の元\(b\)で\(\delta b=c\)なる\(b\)が存在する。 その\(b\)に対し\(db\)は、図式の可換性より \(\delta db=0\)である。よって\(A^p\)の元\(a\)があり、\(\delta a=db\)となる。これにより \(\forall c\in C^{p-1}(\mathrm {for}\ dc=0)\)から\(a\in A^p\)への対応が出来る。 しかし、これには不定性がある。 不定性は\(b\)の代わりに、\(b+x\ \ (\delta x=0)\)を選んだ時に出るが、横の列の短完全性より \(\delta y=x,y\in A^{p-1}\)となり、図式の可換性、及び\(\delta _1\)の単射性 より不定性は結局\(dy\)だけ生じることになる。
さらにこの時、この\(c\)のそのチェイン複体\((C,d)\)で見たときのコホモロジー類\([c]\)は全て \((A,d)\)で見たときの同じコホモロジー類 \([a]\)に対応することが分かる。実際\(c\)が\(c=d\acute {c},\ \ \acute {c}\in C^{p-2}\)であるとすると、 \(\delta _2\)の全射性より \(\delta \acute {b}=\acute {c},\ \ (\acute {b}\in B^{p-2})\)なる\(\acute {b}\)が存在する。 図式の可換性より\(d\acute {b}=b\)である(不定性は上記のとおり)。 よって\(db=d^2\acute {b}=0\)となる。 \(\delta _1\)の単射性より、結局\((C,d)\)で見たときのコホモロジー類\([c]\)は全て同じ\(a(+dy)\)に 対応することが分かる。さらに\(d\delta a=d^2b=0\)より\(\delta da=0\)。\(\delta _1\)の単射性より \(da=0\)。よって\(a\)は\((A,d)\)で見た時のpサイクルである。不定性は上に見たように\(dy\)だけなので \((A,d)\)で見たときのコホモロジー類\([a]\)が対応することが分かる。 この対応
をバウンダリー準同型写像という。
この時次の系列が完全であることが分かる。
\(H^*_d(B)\)において\(\mathrm {Im}\delta _1=\mathrm {Ker}\delta _2\)であることは短完全性より自明。 \(\mathrm {Im}d_*=\mathrm {Ker}\delta _1\)は、\([a]=d_*[c]\)に対して上記の対応により\(\delta _1a= db\)であるから成立する。\(\mathrm {Im}\delta _2=\mathrm {Ker}d_*\)は、まず\(b\in Z^{p-1}_d(B)\) とすると\(\delta _2b=c\)は図の可換性より\(dc=0\)。また\(db=0\)及び\(\delta _1\)の単射性より対応 する\(a\)は\(0\)。 次に\(d_*[c]=0\)とすると、\(c\)に対応する\(b\in B^{p-1}\)が何か考える (\(\delta _2\)の全射性よりこれは必ずある)。\(0\in H^p_d(A)\)の代表元 \(a=dy\ \ (y\in A^{p-1})\)が対応するとすると、\(b=\delta _1 y\)が対応するように思うが、 \(\delta _2b=0\)である。つまり対応する\(b\)は\(\delta _2\)の全射性からくる不定性よりくる。 つまり\(b\in Z^{p-1}_d(B)\)であれば\(\delta _1^{-1}db=0\)であり、\(\delta _2b=c\)である。
以上のことから完全であることが分かる。
多様体\(M\)に対しまず次の仮定を置く。
\(M\)は有限個の連結で可縮な\(M\)の部分多様体\(M_\alpha \)が被覆になっている。つまり
であるとする。これは例えば、各点pでの\(\varepsilon \)球を被覆\(M_p\)とすればいい。 特に\(M\)がコンパクトであれば有限個に落とせる。
この時\(M\)上のp次閉形式(\(p\neq 0\)) \(\omega \ (d\omega =0)\)に対し、\(\omega \)の\(M_\alpha \) への制限\(\omega _\alpha =\omega |_{M_\alpha }\)はまた閉形式。 \(M_\alpha \)の可縮性より\(H^p(M_\alpha )=0\)。よってある\(\theta _\alpha \in \Omega ^{p-1}(M_\alpha )\) があって
次に\(M_\alpha \cap M_\beta =\emptyset \)とすると、その上で\(\omega _\alpha =\omega _\beta \)。 よって\(\theta _\alpha -\theta _\beta \)は閉形式。
ここでさらに任意の\(\alpha ,\beta \)に対し、\(M_\alpha \cap M_\beta \)が可縮であると仮定すると、 ある\(\theta _{\alpha \beta }\)があって
さらに\(M_\alpha \cap M_\beta \cap M_\gamma =\emptyset \)であるとすると、
なので\(\theta _{\alpha \beta }+\theta _{\beta \gamma }-\theta _{\alpha \gamma }\)は閉形式。 よって\(M_\alpha \cap M_\beta \cap M_\gamma \)が可縮であるとすれば
なる\(\theta _{\alpha \beta \gamma }\)が存在する。
さらに\(M_{\alpha _0}\cap M_{\alpha _1}\cap M_{\alpha _2}\cap M_{\alpha _3}\neq \emptyset \)であり、 それが可縮であるとする。この場合も同じように
よって\(\theta _{\alpha _0\alpha _1\alpha _2\alpha _3}\)があり
と書ける(\(\vov {i}\)はi番目の添え字がないことを意味する。よって添え字は3個である)。
一般的には\(M_{\alpha _0}\cap M_{\alpha _1}\cap \cdots \cap M_{\alpha _p}\neq \emptyset \)であるとし それが可縮であれば、
なので、ある\(\theta _{\alpha _0\cdots \alpha _p}\)があって
となる。
次の節で、ここまでのことをトポロジーの言葉で表すが、これは2つの完全系列が考えられる。
まずは
のチェイン複体が見てとれる。\(\delta \)は
であり、\(\theta =\!\!\!\!\!\underset {(\alpha _1\cdots \alpha _n)}{\oplus }\!\!\!\!\! \theta _{\alpha _1\cdots \alpha _n}\) に対して
である(\(\delta ^2=0\)は明らかであろう)。
このチェイン複体は完全系列であることが分かる。まず \(\theta =\!\!\!\!\!\underset {(\alpha _0\cdots \alpha _n)}{\oplus }\!\!\!\!\! \theta _{\alpha _0\cdots \alpha _n}\)に対して\(\delta \theta =0\)であるとすると
よって
この時、1の分割\(\{\rho _\alpha \}\ \ (\sum _\alpha \rho _\alpha =1)\)を使って
と置き、\(\acute {\theta }=\underset {(\alpha _1\cdots \alpha _n)}{\oplus } \theta _{\alpha _1\cdots \alpha _n}\) と置くと
従って完全系列である。このチェイン複体のコホモロジー群をチェックコホモロジーという。
今は各\(M_{\alpha _0}\cap \cdots \cap M_{\alpha _n}\)が可縮と仮定しているので、ド・ラーム複体 としても完全系列である。よってこれは縦(ド・ラーム)と横(チェック) のどちらに対しても完全である。これは考えを進めるとド・ラームの定理を導くが、それは 後述する。
次に、最初の部分だけ考える。つまりここでは\(M_\alpha ,M_\beta \)の2つの部分多様体に ついての議論のところを考える。また\(M_\alpha \cap M_\beta \)は可縮である必要はなく、 \(M_\alpha \cup M_\beta =M\)である。 つまり、ここでは
の系列を考える。最初の\(\delta =\cdot |_{M_\alpha }\)は明らかに単射である。 また\(\theta _{\alpha \beta }\in \Omega ^p(M_\alpha \cap M_\beta )\)に対して、1の分割を使って
とすればこれが\(\theta _{\alpha \beta }\)に行くのは明らかなので全射である。 即ち、この系列は短完全系列である。この完全系列をMayer-Vietoris系列という。 従って、コホモロジー群を考えれば、コホモロジーの 完全系列が得られる。即ち
である。この完全系列もMayer-Vietoris系列という。これをいろいろな多様体に応用すれば 色々な多様体のコホモロジーが計算出来る。 それは次の節で見ることにする。
Mayer-Vietoris系列を使っていろんなコホモロジーを計算する。 まず
と置く。それぞれ(n次元)球体、(n-1次元)球面という。 これらのコホモロジーを計算しよう。 まず\(D^n\)は明らかに1点に可縮なので
が分かる。\(S^{n-1}\)はMayer-Vietoris系列を考えれば分かる。まず\(S^{n-1}\)を \(x_1>-\varepsilon \)と\(x_1<\varepsilon \)の2つの領域に分ける。それぞれを\(U_1,U_2\)とする と、これらは明らかに\(D^{n-1}=\{x_2^2+\cdots +x_n^2<1\}\)の領域に変形できる。また \(U_1\cap U_2\)は\(x_1=0\)の\(S^{n-2}\)に変形できる。よって次の系列になる。
ここで\(n=2\)の場合、即ち\(S^1\)の場合を考える。 \(S^1\)上の関数は周期関数でないといけない。よって0次は定数がコホモロジー群の代表元である。 また1次の場合は、\(S^1\)の座標を\(\theta \)で表し\(\theta =0\)と\(\theta =2\pi \)を同一視することに する。この時\(\omega \in \Omega ^1(S^1)\)を周期関数\(f(\theta )\)を用いて \(\omega =f(\theta )d\theta \)と書き(\(d\theta \)は 完全形式ではないことに注意)、\(a=\int ^{2\pi }_0f(\theta )d\theta \)と置けば \(\omega -\frac {a}{2\pi }d\theta \)は完全形式となる。実際これを積分すれば周期関数が得られ、 従って\(\Omega ^0(S^1)\)の元である。従って\(H^1(S^1)=\mathbb {R}\)である。 まとめると
となる。
また\(D^{n}\)は\(D^n\sim \mathbb {R}^n\)より
なのでMayer-Vietoris完全系列より、帰納的に
が分かる。
(ここで一つ注意。任意の多様体\(M\)に対して、\(H^0(M)\)は簡単に計算出来る。まず、\(M\)が連結である とする22
多様体においては\(M\)が連結であるとは、\(M\)の任意の2点\(a,b\)に対して、\(a,b\)を繋ぐ道、 \(l:I=[0,1]\rightarrow M,\ l(0)=a,l(1)=b\)が存在することと思ってよい。\(M\)が連結でないならば、 \(M\)はいくつかの連結な部分多様体\(M_i\)の和集合である。各\(M_i\)を\(M\)の連結成分という。
。この時、\(M\)上の関数\(f\in \Omega ^0(M)\)が定数値関数でないとすると、\(df\neq 0\)なる点が 存在することになるので、\(f\in Z^0(M)\)であるならば、\(f\)は定数値関数となる。 よって\(H^0(M)=\mathbb {R}\)である。後は一般的に\(M\)が連結でない場合にも、\(M\)の 連結成分の数を\(a\)とすれば、\(H^0(M)=\mathbb {R}^a\)となることが分かる。)
次に\(\mathbb {R}^n\)からいくつか点をくり抜いたもの。まず1点だけくり抜いたものは明らかに \(S^{n-1}\)を変位レトラクトとして取れる。よってコホモロジー群は\(H^p(S^{n-1})\)に等しい。 \(\mathbb {R}^n\)から2個の点をくり抜いたものは\(S^{n-1}\)2個を1点でくっつけたものに変形 出来る(つまり変位レトラクト)。よってMayer-Vietoris系列は
ここで2,3列の\(\vdots \)の部分は\(0\)である。また\(H^0=\mathbb {R}\)より \(H^0=\mathbb {R},\ H^{n-1}=\mathbb {R}^2,\ 他=0\)となる。m個の点をくり抜いたものは明らかに \(S^{n-1}\)をm個1点でくっつけていったものに変形出来る。それを\(A_m\)と書くとすると Mayer-Vietoris系列は
となるので、\(H^0(A_m)=\mathbb {R}\)、\(H^{n-1}(A_m)=\mathbb {R}^m\)、\(他=0\)となる。
さらにちょっとだけ一般化して\(S^{\lambda _1},S^{\lambda _2},\cdots ,S^{\lambda _m}\)を1点で 貼り付けていったものを\(A_m\)とすると(\(\lambda _i\neq 0\))
ここで1列目は\(H^p(A_m)\)の列で、2列目は表示している部分以外は\(H^p(A_{m-1})\)で、3列目 は0次以外は0である。よって帰納的に \(H^0(A_m)=\mathbb {R},H^1(A_m)=\mathbb {R}^{C_1},H^2(A_m)=\mathbb {R}^{C_2},\cdots \) となる。ここで\(C_i\)は\(\lambda _1,\lambda _2\cdots \lambda _m\)の中でiに等しいものの数である。
こんな感じで計算出来る。
ここでは、チェックコホモロジーの節での議論を推し進めてみる。再びチェイン複体
を考える。各\(M_\alpha \cap M_\beta \cap \cdots \)は可縮であると仮定する。 ここで記号を簡単にするため
と書く。\(\theta =\underset {n}{\oplus }\theta _{\alpha _1\cdots \alpha _n}\in \underset {n}{\oplus } \Omega ^p\)に対して、外微分を
で定義する。この時\((\underset {n}{\oplus }\Omega ^p,d)\)はチェイン複体になる。 また、これはチェックコホモロジーの\(\delta \)と可換。つまり\(d\delta =\delta d\)である。 即ち\(d,\delta \)は互いにチェイン写像になっている。
ここで、
と書くことにすると、\(d\)と\(\delta \)の可換性より \(d(\mathrm {Ker}\delta ^p_n)\subset \mathrm {Ker}\delta ^{p+1}_n\)なので、 \((\mathrm {Ker}\delta ^*_n,d)\)はチェイン複体になっている。よって \((\underset {n}{\oplus }\Omega ^*/\mathrm {Ker}\delta ^*_n,d)\)もチェイン複体である。 このことから
の完全系列、及びコホモロジーの完全系列
が得られる。 この時、\([\omega ]\in H^p_d(\mathrm {Ker}\delta ^p_{n+1})\)とすると、\(d_*[\omega ]\)の対応は 代表元で考えると\(\omega \rightarrow \delta ^{-1}d\delta ^{-1}\omega \)である (\(\delta ^{-1}d\delta ^{-1}\omega \)はもちろん2つ目の\(\delta \)が単射ではないので、 一般には集合である)。完全系列なので1つ目の\(\delta \)が単射なので、 \(\omega \rightarrow d\delta ^{-1}\omega \)(これも集合)の対応を考えられる。 \(\omega \in Z^p_d(\mathrm {Ker}\delta ^p_{n+1})\)なので\(d\omega =0\)。よって図式の可換性より \(d\delta ^{-1}\omega \subset \mathrm {Ker}\delta ^{p+1}_n\)。従ってそのコホモロジー を考えると
この時\([d\delta ^{-1}\omega ]\)は一般には\(0\)ではない。\(\delta ^{-1}\omega \)が \(\mathrm {Ker}\delta ^p_n\)の元(正確には部分集合)ではないからである。
。この対応を\(j\)と書くとする。 これは実際に1価写像である。なぜなら\(\delta ^{-1}\)の不定性は\(\mathrm {Ker}\delta ^p_n\)から 来るので、\(d(\mathrm {Ker}\delta ^p_n)=B^{p+1}_d(\mathrm {Ker}\delta ^{p+1}_n)\)であり、 \([\omega ]\)の代表元の選び方から来る不定性は \(d\lambda \)(\(\lambda \in \mathrm {Ker}\delta ^{p-1}_{n+1}\)) から来るので、図式の可換性より \(\delta ^{-1}d\lambda \)の任意の元は、ある\(a\in \underset {n}{\otimes }\Omega ^{p-1}\) (\(\delta a=\lambda \))と \(b\in \mathrm {Ker}\delta ^p_n\)があって\(da+b\) と書けるので\(d\delta ^{-1}d\lambda \subset B^{p+1}_d(\mathrm {Ker}\delta ^{p+1}_n)\) となるので不定性はなくなる。
この\(j\)を使って\(H^0_d(\mathrm {Ker}\delta ^0_{p+1})\)から \(H^p_d(\mathrm {Ker}\delta ^p_1)\)へ移してき、最後に\(\delta _0=\cdot |_{M_\alpha }\)の単射性で \(H^p(M)\)へ移せば、結局\(H^0_d(\mathrm {Ker}\delta ^0_{p+1})\)から\(H^p(M)\)への対応を考える ことが出来る。この時この対応が全単射、即ち各\(j\)が全単射であることが示せる。 全射性は\(M_\alpha \cap \cdots \)の可縮性よりどんな元も引き戻せることから。 単射性は\(H^{p+1}_d(\mathrm {Ker}\delta ^{p+1}_n)\)の\(0\)の代表元は、\(dx\)(\(x\in \mathrm {Ker} \delta ^p_n\))であり、\(\delta x=0\)であるから。
以上のことから
の同型が成り立つ。即ちド・ラームコホモロジーとチェックコホモロジーの同型である。 これをド・ラームの定理という。
コンパクト多様体\(M\)に対して、\(M\)上の関数
を考える。\(f\)の微分\(df\)が孤立した0点のみを持つとする。この時0点は\(M\)のコンパクト性より 有限個であることが分かる。各\(df\)の0点(臨界点という)\(p\in M\)に対し、 \(f(p)\)を小さい順に並べて番号を付ける。 即ち\(p_1,p_2,p_3,\cdots ,p_k\)が\(df=0\)であり、\(f(p_1)\leq f(p_2)\leq \cdots \leq f(p_k)\)とする。 この時\(M\)の開被覆\(\{M_i\}\)として、\(M_i\cap M_j\neq \emptyset \Leftrightarrow i-j=\pm 1\)であるように 取る。また、各\(M_i\)は\(df\)の0点の内、\(p_i\)のみを含むとする。
次に、十分小さい\(\varepsilon >0\)を取って\(\mathbb {R}\)の開集合
をとる。この\(f^{-1}\)の像を\(M_i^\varepsilon \)とする。\(M_i\)は”値”が\(f(p_i)\)より大きいものを \(-df\)で、小さいものを\(df\)で、それらをベクトル場として\(M_i^\varepsilon \)へ変形出来る。
各\(M_i\)に対して考える。まず各\(p_i\)でのテンソル場
が\(\pd ^2f(p_i)\neq 0\)とする。 この時適当に座標を取れば、\(p_i\)の近傍において
となる。ただし\(p_i\)の座標を原点にとった。
と置くと、\(M_i^\varepsilon \)は
の範囲になる。これは下図に対応する。
図の点線の円は、この\(p_i\)の近傍での座標系\(x\)が取れる範囲とする。\(\varepsilon \)を十分小さく 取れば、上図のように取れる。\(M_i\)の、その値が\(f(p_i)-\varepsilon \)より小さい部分を \(M_i^{\varepsilon -}\)とすると、上図のように明らかに\(M_i^{\varepsilon -}\)に
の部分を貼り付けたものは\(M_i\)に変形出来る(\(M_i^{\varepsilon -}\)にその部分を貼り付けた ものは、\(M_i\)に変形する際に臨界点を持たないから)。 貼り付けた部分は明らかに\(D^\lambda =\{x_1^2+\cdots +x_\lambda ^2<1\}\)と同じホモトピー型を 持つ(変形出来るという意味)。つまり\(M_i\)は\(M_i^{\varepsilon -}\)に\(D^\lambda \)を 貼り付けたものに変形出来る。\(M_i\)と貼り付けた\(D^\lambda \)の共通部分(貼り付けた部分) は\(D^\lambda \)の境界で、\(\sim S^\lambda \)である。この\(M_i\)に\(D^\lambda \)を貼り付けたものを
と書くことにする。
一方で\(M_i^{\varepsilon -}\)は、\(M_{i-1}\)の\(f(p_{i-1})+\acute {\varepsilon }\)より大きい値 を持つ部分にまで変形出来る。このことから\(M\)は\(D^\lambda \)をどんどん貼り付けていったようなもの に変形出来る。特に\(M_1\)は臨界点を1つも含まない\(M_0\)にある\(D^\lambda \)を貼り付けたもの。 \(M\)のコンパクト性より\(f\)の最小値がある。\(M_0\)はその点まで\(-df\)で変形していける( \(M_0\sim 1点\))。よってこの時、\(M\)は1点\(D^0\)に\(D^\lambda \)を貼り付けていったものとみなせる。 つまり
となる。
以上のことからコンパクト多様体\(M\)のコホモロジー群が計算出来る。 まず、
と置くと、\(A_{m-1}\!\!\sim \!\! A_m\!\!\!\!\underset {S^{\lambda _m-1}}{\cup }\!\!\!\! D^{\lambda _m}\) であり、共通は\(S^{\lambda _m-1}\)のホモトピー型なので、Mayer-Vietoris系列は
となる。\(H^0(A_m)=\mathbb {R}\)より、\(A_m\)のコホモロジー群は\(A_{m-1}\)のそれに対し、 \(\lambda _m\)次が1次元上がるか、\(\lambda _m-1\)次が1次元下がるかのどちらかである。 特に\(D^1\)を貼り付けたものは\(1\)次が\(1\)上がるのが分かる。
以上に議論により明らかに不等式
が成り立つ。ここに\(C_i\)は\(\lambda _m=i\)である\(m\)の数(臨界点の数)である。 これをMorseの不等式という。
チェイン複体\((A,d)\)が有限列
であるとする。コホモロジー群\(H^p(A)\)に対し
を\(A\)のオイラー数という。また\(b_p:=\dim H^p(A)\)をベッチ数という。 特に多様体\(M\)のオイラー数は
である。
次に各\(A^p\)が有限次元であるとする。\(A^p\)の直和分解
また、\(d:A^p/\mathrm {Ker}d_p\rightarrow B^{p+1}(A)=\mathrm {Im}d_p\)は同型。 及び\(\mathrm {Ker}d_p\simeq H^p(A)\oplus B^p(A)\)であるので
従って
となる。
ここまでの例からいろんな多様体のオイラー数を計算出来る。 例えば
を計算出来る。
の時、
が分かる。従って\(\lambda _m=i\)である\(m\)の数を\(C_i\)と置くと
となる。
境界のない向きのついたコンパクト多様体\(M\)が計量\(g\)を持つとする。 \(\omega \in \Omega ^p(M)\)とした時、
に対し、Hodge作用素\(*:\Omega ^p(M)\rightarrow \Omega ^{n-p}(M)\)を
で定義する。ここで、添え字の上げ下げは計量\(g_{ij}\)で下げ、その逆行列\(g^{ij}\)で上げる。 また\(g=\det g_{ij}\)である。よって\(g>0\)であれば
。
\(\alpha ,\beta \in \Omega ^p(M)\)、に対し、内積を
で定義する。これにより\(\Omega ^p(M)\)は内積空間になる。 \(d\)は\(\Omega ^*(M)\)上の線形作用素なのでその双対が考えられる。 \(\alpha \in \Omega ^{p-1}(M)\)、\(\beta \in \Omega ^p(M)\)とすると、
ここで
とすると(\(g<0\)の場合にはこの\(-1\)倍で定義する)、
これを\(M\)上で積分すると、\(\int _Md\omega =0\)より、
となる。この\(\delta \)が\(d\)の双対である。 ここで\(\delta \)は明らかに\(\delta ^2=0\)である。よって\((\Omega ^*(M),\delta )\)もチェイン複体に なっている。
次に
と置くと
となる。\(\Box \)をラプラシアンという。\(D\)と\(\Box \)の双対\(D^*\)、\(\Box ^*\)は明らかに \(D^*=D\)、\(\Box ^*=\Box \)。よってド・ラーム複体は(付録Aを参照)
よって\(\omega \in \Omega ^*(M)\)は
の形で書ける。ここで\(\omega _0\in \mathrm {Ker}\Box \)であり
とおいた。上の直和分解は直交分解でもあったので、また\(d\omega _1\perp \delta \omega _2\)より Hodgeの分解
が得られる。
さらに\(\omega \in \mathrm {Ker}\Box \)とすると
よって\(d\omega =\delta \omega =0\)。これから
が得られる。
ここでさらに
が示される。証明は\(\rightarrow \)の全単射性を示せばよい。 単射性は\(\omega ,\acute {\omega }\in \mathrm {Ker}\Box \)で、これらが同じコホモロジー類、つまり \(\omega -\acute {\omega }=d\theta \)であるとすると、Hodgeの分解より\(d\theta =0\)、つまり \(\omega =\acute {\omega }\)。 全射性は\(\omega =\omega _0+d\omega _1+\delta \omega _2\)の分解より
なので、\(\omega =\omega _0+d\omega _1,\ (\omega _0\in \mathrm {Ker}\Box )\)となり、 よって\([\omega ]=[\omega _0]\)に対し\(\omega _0\in \mathrm {Ker}\Box \)と対応する。
また、\(M\)に対するこの条件のもとでは、\(H^p(M)\simeq H^{n-p}(M)\)が容易に分かる。 それは\(*\)がその対応を与えること、Hodgeの分解、などに注意しながらちょっと考えたら分かる。
この対応\(H^p(M)\simeq H^{n-p}(M)\)、及びMayer-Vietoris系列を用いれば、さらに色々な具体例を 計算するのに役立つ。
まず、2次元トーラス\(T^2=S^1\times S^1\)を考えよう。 これは要するに浮輪の形である。\(T^2\)は2つのチューブで被覆でき、 それぞれのチューブは\(\sim S^1\)であり、共通部分は\(\sim S^1\cup S^1\)なので
の系列を考えればよく、簡単な考察から
となる。
これを一般化して、穴が\(g\)個あいた浮輪の表面(2次元)\(\Sigma _g\)のコホモロジー群を計算する。
これは、まずチューブに\(D^1=I\)をくっつけて変形して”かじられた”浮輪”を作る。これを\(A_1\) と置く。これにさらに\(D^1\)をつけて変形し、さらに\(D^1\)をつけて変形すれば、”かじられた” \(\Sigma _2\)が出来る。これを\(A_2\)と置く。このように”かじられた”\(\Sigma _{m-1}\) に\(D^1\)を2回つけて変形するということをすれば、”かじられた”\(\Sigma _m\)が作れる。これを\(A_m\)と 置く。 これは作り方から、\(A_m\sim A_{m-1}\underset {S^0}{\cup }D^1\underset {S^0}{\cup }D^1\)となる。 まず、\(A_1\sim S^1\underset {S^0}{\cup }D^1\)は\(0\)次が\(\mathbb {R}\)で、\(1\)次が\(\mathbb {R}^2\)で、 他は\(0\)であるのが分かる。 後は帰納的に\(A_m\)は\(0\)次が\(\mathbb {R}\)で、\(1\)次が\(\mathbb {R}^{2m}\)で、他は\(0\)であるのが 分かる。後は\(\Sigma _g\sim A_g\underset {S^1}{\cup }D^2\)となるので、\(\Sigma _g\)のコホモロジー群 の\(0\)次と\(2\)次が等しくなることから、
と求まる。よってオイラー数は\(\chi (\Sigma _g)=2-2g\)となる。
まず、言葉の定義から始める。 \(n\)次元多様体\(M,N\)に対し、\(M\)から\(N\)への滑らかな写像があるとする。 それぞれの局所座標系を\(x,y\ \ (y=y(x))\)と書いた時、\(p\in M\)での変換行列
の行列式の値が\(\neq 0\)の時、\(p\)は正則点であるという 55
。 \(\varphi (p)=q\)とした時、\(\varphi ^{-1}(q)\)の点が全て正則点である時、\(q\)は正則値という。 \(p\)が正則点でない時、\(p\)を臨界点といい、\(q\)が正則値でない時、\(q\)を臨界値という。 この時、サードの定理は次のように述べられる(証明は省略する)。 即ち、臨界点からなる集合\(C\)は測度\(0\)である。 平たく言えば、\(C\)は、\(n\)次元体積が任意の正の数\(\varepsilon \)より小さい領域で囲むことが出来る ということ。
以上を踏まえて、以下で写像度の話をする。 境界のない向きのついたn次元多様体\(M,N\)に対し、滑らかな全射
があるとする。また\(M\)がコンパクト、\(N\)が連結であるとする。\(y\in N\)を正則値とし \(y\)の逆像 \(f^{-1}(y)\)(これは点集合となる。また\(M\)のコンパクト性より、高々有限個の点からなる) の任意の点を\(x\)とする。 また\(y\)を含む連結な開集合\(U\)に対し、\(f^{-1}(U)\) が連結な開集合の族\(\{V_x\}_{x\in f^{-1}(y)}\ \ (V_x\cap V_{\acute {x}}=\emptyset ,x\neq \acute {x})\) に等くなるように\(U\)を選ぶ。このようにすると、各\(V_x\)は\(U\)と微分同相である。 この時、\(U\)と\(V_x\)が同じ向きであるとすれば\(+1\)、向きが同じでない(逆向きという)であれば \(-1\)とカウントし(これを\(f\)の\(x\)での符号といい、\(\mathrm {sign}f_x\)と書く)、 全ての\(x\in f^{-1}(y)\)について足し上げたものを\(\deg f_y\)と 書き、\(f\)の\(y\)での次数と呼んでおく (即ち\(\deg f_y=\sum _{x\in f^{-1}(y)}\mathrm {sign}f_x\))。 実はこれは\(y\)の取り方によらない。 \(\acute {y}\)を\(N\)の別の正則値とし、\(y\)と\(\acute {y}\)を繋ぐ道\(l\)上の各点\(p\)上で、開集合 \(U_p(\ni p)\)を\(U\)と同じ条件を満たすように選ぶ。 \(f^{-1}(U_p)=\{V_{x,p}\}_{x\in f^{-1}(p)}\) とした時、\(V_x=V_{x,y}\)から\(V_{\acute {x},\acute {y}}\) (\(\acute {x}\)は\(f^{-1}(\acute {y})\) の元で、\(f^{-1}(l)\)の\(x\)を含む連結成分の\(x\)とは別の端点とする) まで\(f^{-1}(l)\)に沿って座標変換して辿っていけば、 \(V_x\)と\(V_{\acute {x},\acute {y}}\)が同じ向きであることが分かる。よって \(\mathrm {sign}f_x=\mathrm {sign}f_{\acute {x}}\)となり、 \(\deg f_y=\deg f_{\acute {y}}\)となる。\(y\)に依存しないので、これを\(f\)の 写像度といい、\(\deg f\)と書く。
ここで\(\omega \in \Omega ^n(N)\)に対し、\(f^*\omega \in \Omega ^n(M)\)の\(V_x\)上の積分は
となり、よって
となる。\(N\)の1の分割\(\{\rho _\alpha ,U_\alpha \}\)を使えば、
よって\(\alpha \)について足し上げれば、
即ち
となる。
\(f\)が全射でない場合には\(f(M)\)の次元は一般に\(n\)より小さくなるが、その場合には \(\deg f=0\)と定義する。こうすれば、上の結果は\(f\)が全射でない場合にも成立する。
さらに\(M,N\)を上の条件を満たすとし、さらに \(N\)がコンパクトで\(W\)が境界のない向きのついたn次元多様体とした時、 \(g:N\rightarrow W\)とすると、\(\omega \in \Omega ^n(W)\)に対して
よって
となる。
さらに\(\deg f\)はホモトピー不変量であることも示せる。それにはまず、少しいくつかの定義を する必要がある。多様体\(M\)の\(x\in M\)での接ベクトル\(T_xM\)を、\(x\in M\)での\(v\in \Gamma (TM)\) (\(v(x)\))全体からなる集合とする。よって\(T_xM\)はベクトル空間となる。 この時、\(m\)次元多様体\(M\)から\(n\)次元多様体\(N\)への滑らかな写像 \(f:M\rightarrow N\)に対し、上で与えた変換行列は 接ベクトル\(T_xM\)から\(T_{f(x)}N\)への線形写像を定義する。これを\(df_x\)と書く (即ち\(df_x:T_xM\rightarrow T_{f(x)}N\))。 \(M\)の各点全体にわたってこれを定義すれば、 これは\(f\)の共変関手であり、 押し出しといい、\(f_*\)と書く。即ち\(f_*:TM\rightarrow TN\)である。 この時、\(df_x\)が全射でない全ての点\(x\in M\)の集合を\(C\)と書き、これを臨界点の集合、 \(f(C)\)を臨界値の集合という。また全射である点全体の集合を\(f\)の正則点の集合といい、それの \(f\)の像を正則値の集合という。 これは\(m=n\)の時、上で定義した言葉と一致する。この場合にもサードの定理は成立する。
この時\(f:M\rightarrow N\)に対し、\(m\geq n\)の時、\(y\in N\)が正則値ならば\(f^{-1}(y)\)は \(M\)の\(m-n\)次元の滑らかな部分多様体となる。直観的には点\(x\in M\)から\(f(x)\in N\)が動かない 方向(それは接ベクトルの退化する成分への方向である) への自由度が\(\dim \mathrm {Ker}df_x=m-n\)次元分あることから分かると思う。 言って見れば、その自由度の分が\(f\)により退化する。
次にいよいよ\(\deg f\)がホモトピー不変量であることを示す。 まず、\(M,N\)を最初に与えた条件を満たす 多様体とし、\(f,g:M\rightarrow N\)がホモトープ であるとする。\(\varphi :I\times M\rightarrow N\)をホモトピーとし、\(\varphi _0=f,\varphi _1=g\) とする。この時\(N\)の正則値\(y\)に対し、\(\varphi ^{-1}(y)\)は1次元多様体となる。\(\varphi ^{-1}(y)\) は(1)閉じた円になるか、(2)端点が\(I\times M\)の両端の\(M\)についてるか、 (3)片方の\(M\)についてるかのいづれかである(下図参照)。
(1)の場合には問題ない。(2)の場合には\(\mathrm {sign}f_x\)はどちら側の\(M\)に対しても等しい。 (3)の場合には、一方の端(\(x\)とする)で(\(I\times M\)の中で)\(V_x\subset M\)の向きを決めると、 \(\varphi ^{-1}(y)\)をもう一方の端まで向きを付けながら辿っていけば、 もう一方の端(\(\acute {x}\)とする)では\(V_{\acute {x}}\subset M\)の向きが逆向きに なってることが分かる。よってそこでは符号が逆になる。従って、符号を足し上げれば打ち消しあう。 以上のことから、後は\(\deg f\)は\(\{0\}\times M\)での符号の和であり、\(\deg g\)は \(\{1\}\times M\)での符号の和となることから、\(\deg f=\deg g\)が分かる。
この節では”物理的な”微分形式を考える。物理的なという意味は、直観的にいえば物理で通常使う ”無限遠方で恒等的に\(0\)に近づく”という仮定である。これを定式化すると、\(M\)が一般にはコンパクト でない場合に(コンパクトであればこれまでの微分形式で十分である)、\(\omega \in \Omega ^p(M)\)、 および\(\omega \)の任意回数微分したものも、恒等的に\(0\)に近づき、さらにそれらの積もそうである とする。\(0\)への近づき方は\(M\)の任意の\(p\)次元の(一般には有界ではない)部分多様体\(N\)上での 積分が有限の値を取るような振る舞いをするものとする。 少々冗長な定義であるが、このようなものに制限したものがだいたい物理的な微分形式と一致する。 物理的なp次微分形式全体からなる\(\Omega ^p(M)\)の部分集合を\(\Omega _{ph}^p(M)\)と書くことにする。 数学では簡単に”コンパクト台を持つもの”として定義するが、ここでの定義はそれより若干ゆるい 条件である。物理では扱う関数は必ずしもコンパクト台を持たないからである。しかし、 \(\Omega ^p_{ph}(M)\)には多くの場合には属している。
この物理的なド・ラーム複体に対して、ホモトピー \(T:\Omega ^p_{ph}(\mathbb {R}\times M)\rightarrow \Omega ^{p-1}_{ph}(\mathbb {R}\times M)\)を \(M,\mathbb {R}\)の局所座標を\(x,t\)で表して、
に対して
で定義する。ただし\(e(t)\in \Omega ^0(\mathbb {R})\)であり、
とする。\(E(t)=\int ^t_{-\infty }e(t)dt\)と置く。この時
および
従って
を得る。2つのチェイン写像 \(\tau :\Omega ^p_{ph}(\mathbb {R}\times M)\rightarrow \Omega ^{p-1}_{ph}(M)\)、 \(e:\Omega ^p_{ph}(M)\rightarrow \Omega ^{p+1}_{ph}(\mathbb {R}\times M)\)を
と置くと、\(e_H\tau _H=1\)となる。 \(e_H\)は明らかに単射なので、コホモロジー群の同型
を得る。
ここで\(H^0_{ph}(\mathbb {R}^n)\ \ (n\geq 1)\)は無限遠方で\(0\)に近づく定数値関数なので、それは\(0\)であるので \(H^0_{ph}(\mathbb {R}^n)=0\)である。 よって
となる。
明らかな性質として\(\omega \in \Omega ^{n-1}_{ph}(M)\)に対して、ストークスの定理は
となる。
\(\mathbb {Z}_2\)階数づけされたベクトル空間
を超空間という。
積の定義された超空間でその元が、積により\(i,j=\pm \)として
と階数が保たれる時、超代数という。 超代数\(V\)の自己準同型全体からなる集合\(\mathrm {End}(V)\)は
で\(\mathbb {Z}_2\)階数づけされる。これは分かりやすくいうと、\(V\)の元\(\v {e}\)を
\(\v {e}^{\pm }\in V^{\pm }\)で表せば、\(a\in \mathrm {End}(V)\)は
で表される。ここで\(a^{ji}\ (i,j=\pm )\)は\(\mathrm {Hom}(V^i,V^j)\)の元である。 以下では簡単のため超代数といえば、\(\mathrm {End}(V)\)を表すとする。
超代数\(A=A^+\oplus A^-\)の元\(a\)に対し、\(a\in A^+\)の時\(|a|=0\)。\(a\in A^-\)の時\(|a|=1\)で 階数を定義する。この時、超交換子を\(a,b\in A^{\pm }\)に対して
で定義する。\([a,b]=0\)の時超交換するという。
超代数\(A\)に対し超トレース(S-trace)を
で定義する。ここで\(\mathrm {tr}_{A^{\pm }}\)は\(A^\pm \)の元に対してトレースを取ったもの。 上の行列表示でいえば\(\mathrm {Str}(a)=\mathrm {tr}a^{++}-\mathrm {tr}a^{--}\)である。 \(\mathrm {Str}([a,b])=0\)となる。
内積を持つ超空間\(V=V^+\oplus V^-\)に対し、線形写像\(T\)を
とする。\(T\)の双対(エルミート共役)は\(T^*:V^-\rightarrow V^+\)である。 ここで\(D\in \mathrm {End}(V)\)を
と置く。従って\(D^*=D\)。よって\(\mathrm {Ker}D=\mathrm {Ker}D^2\)(付録Aを参照)。
上で定義した\(D\)に対し、\(D\)の指数を
で定義する。
ここで
が対角化出来るとする。\(D^2\)に対し、\(T^*T\)の固有値\(\lambda \)に属する固有空間を\(H_\lambda ^+\)、 \(TT^*\)の固有値\(\lambda \)に属する固有空間を\(H_\lambda ^-\)と置く。すると\(\lambda \neq 0\)の時、
が恒等写になることから、\(\dim H_\lambda ^+=\dim H_\lambda ^-\)となる。 従って
となる。最後の等式は、\(\mathrm {Ker}D=\mathrm {Ker}D^2\)なので \(\mathrm {Ker}T^*T=\mathrm {Ker}T\)、\(\mathrm {Ker}TT^*=\mathrm {Ker}T^*\)より。
をマッキーン・シンガーの定理という。
境界のない向きのついたコンパクト多様体\(M\)のド・ラーム複体は
により\(\mathbb {Z}_2\)階数づけされる。 また\(D=d+\delta \)に対し
で階数づけすれば上述のことがそのまま適用出来る。即ち
となる。
内積の定義されたベクトル空間(内積空間)\(V\)に対し、\(V\)上の線形作用素を行列とみなして考える。 行列\(T\)に対し、\(\omega \in \mathrm {Ker}T^*\)とすると(\(T^*\)は\(T\)の双対行列或いはエルミート共役 とかいう。\(T^t\)とか\(T^\dagger \)とか)任意の\(\alpha \in V\)に対し
よって\(\omega \in \left (\mathrm {Im}T\right )^\perp \)。上の等式から逆も成り立つので
よって\(V\)の直交分解
特に\(T^*=T\)の時
である。ここで\(\mathrm {Ker}T\subset \mathrm {Ker}T^2\)は自明。逆も成り立つ。 \(\omega \in \mathrm {Im}T\)の時、\(T\omega \in \mathrm {Im}T\)なので、これが\(\mathrm {Ker}T\)に入る には\(T\omega =0\)。よって\(\omega \in \mathrm {Ker}\)でもあり、上の直交分解より \(\omega =0\)でないといけない。よって\(\mathrm {Ker}T^2\subset \mathrm {Ker}T\)。つまり \(\mathrm {Ker}T=\mathrm {Ker}T^2\)となる。
行列\(T\)に対し
と定義する。この簡単な性質は
である。ここで\(S\)も行列。 1つ目は自明。2つ目は
であり、
より
より示された。