この『経路積分』ノートは、量子力学の時間発展を"粒子のすべての可能な軌道の足し合わせ"として記述する、ファインマンの経路積分の枠組みを軸にまとめたものです。教科書的な導入にとどまらず、汎関数積分の構成法から、ガウス積分、摂動展開、さらにはフェルミオンの取り扱いまで、場の量子論に必要なツール一式を自分なりに再整理しました。
前半ではシュレディンガー・ハイゼンベルグ・ディラック表示の違いを丁寧に確認しつつ、汎関数積分の導出を1ステップずつ数式で構築。調和振動子を例に、時間発展演算子がどう積分表現に書き換わっていくかを、デルタ関数挿入やハミルトニアンの指数展開を通して明示的に示しました。コヒーレント状態の1の分割を用いた経路積分表示や、Wick回転・WKB近似など、より実践的な手法もここで登場します。
中盤以降はガウス積分に焦点を当て、場の理論であらわれる関係式を系統的に計算し、その背景にある線形代数的構造(対称性、行列式、パッフィアン)や、ルジャンドル変換と有効ポテンシャルの解析的構造の関係まで丁寧に追いました。真空期待値が非自明な場合や、古典解周りの量子補正の計算にも踏み込んでいます。
さらに後半では、フェルミオンの経路積分も扱っています。グラスマン数とその反交換関係の性質の話題から導入して、フェルミオン版の調和振動子系、コヒーレント状態、複素グラスマン積分、さらにはWick則の構成まで、可能な限り具体的に解説しました。
「数式の意味を一つずつ確認しながら、経路積分の全体像を見通したい」という人にとって、思考の足がかりになるようなノートになっていれば嬉しいです。
経路積分のトピックを系統的に扱っているコンパクトなテキストになったのではないかと思います。
量子力学や場の量子論で現れる経路積分やその周辺の事象の理解のお役にたてれば幸いです。
など