この『量子力学 2』ノートは、前作で扱った基本的な構造――ヒルベルト空間や演算子、時間発展など――のその先を、自分なりにまとめた発展編です。摂動論や近似法といった、現実の量子系を解析する上で避けて通れない手法を中心に扱っています。
まず取り上げたのは摂動論。エネルギーが離散な場合の固有値・固有状態の展開や、相互作用表示(ディラック表示)を使った時間発展の整理まで、1次・2次の補正項を明示的に追えるよう、丁寧に展開しています。続いてのボルン近似では、連続スペクトルの場合を扱い、運動量固有状態を用いた解析を通して、量子散乱の初歩的な構造も掘り下げています。
そしてWKB近似。ここでは波動関数の半古典的展開から出発し、ハミルトン・ヤコビ方程式との関係や、古典軌道に沿った主作用関数の導入などを通して、量子力学と古典力学の橋渡しを試みました。トンネル効果の章では、このWKB近似を活かしつつ、虚数時間への解析接続により、古典的に禁止された領域の透過確率(いわゆるGamow因子)を導出しています。形式的には解析力学ノートとの連携も意識しました。
最後の熱核の章では、時間発展演算子を拡張した熱核の定義とその応用に踏み込み、リップマン–シュウィンガー方程式を導入して摂動論を熱核ベースで再構成する試みもしています。物理的解釈と数学的形式を両輪で整理するのがこのノートのテーマでした。
量子力学の近似手法を数式からじっくり追いたい人、理論の背景をちゃんと見ておきたい人にとって、一つの指針になるかもしれません。
本当はもう少し書きたかったんですが、とりあえず現段階のところまででアップしておきました。
など